ぎっくり腰
「ぎっくり腰」は急性腰痛症といわれ、中腰で重いものを持ち上げようとした時や同じ姿勢から急に姿勢を変えた時に生じる、激痛を伴った腰痛です。
腰痛は先進諸国では70%以上の人が生涯のいずれかの時点で罹患する症状です。その中でいわゆる「ぎっくり腰」は急性腰痛症といわれ、中腰で重いものを持ち上げようとした時や同じ姿勢から急に姿勢を変えた時に生じる、激痛を伴った腰痛です。腰が「ギクッ」となり、その姿勢で身動きできなくなります。ドイツでは「魔女の一撃」と言われており、患者さんに言わせると「ぎっくり腰」も「魔女の一撃」も実に的確な表現のようです。私の経験では、おきなクシャミをした瞬間、背伸びしただけで、朝起きようとしたら、飼い猫が飛びついてきて抱きとめたら等、様々な「ぎっくり腰」エピソードがあります。
原因は様々なことが言われていますが、腰の一種の捻挫が大部分であると考えられています。背骨は上下の骨と前方は椎間板、後方は椎間関節で連結されていて、身体の支柱になると同時に曲がったり伸ばしたりまた捻じったり、各方向へ動くようになっています。そのため足首を捻じった時に発生する、捻挫と同様なことが腰の骨にも起こります。椎間関節を包む関節包や靭帯、筋肉の損傷、椎間板の亀裂などが急激な負荷により生じ、強い腰痛が起こります。また下肢の筋肉のいわゆる肉離れと同様に、腰部の筋肉に肉離れ様の現象も「ぎっくり腰」の原因の一部と言われています。
治療は普通の「ぎっくり腰」であれば、まずは一番楽な姿勢で安静を保つことです。寝る姿勢はうつ伏せでも横向きでも、本人が一番楽な体位で休むことです。早く痛みを軽減するには、整形外科を受診し痛み止めの内服薬や坐薬を処方してもらうのがよいです。腰の安静、支持性を高めるベルトを装用すると、動作も容易に行えるようになります。2〜3日身動きできない状態からやっと歩けるようになり、来院する患者さんが多いのですが、トイレもいけず入院希望されて家族に抱きかかえられて来院する場合もあります。また救急車で搬送される患者さんもいます。自力歩行困難であった患者さんも、腰椎支持ベルトつけたり坐薬を挿したりすると歩行可能になり、多くの患者さんは1〜2週すると、ほとんど痛みは消失するのが普通です。
他の治療法としては注射(各種ブロック注射を含む)や整体的手技がありますが、これらの方法がどのくらい有効化かは、まだ議論が多いところです。劇的に良くなったとの話も聞きますが、しっかりした診断をせずに民間療法を受け、かえって症状が強くなった患者さんもいます。
急性腰痛症を生じる留意すべき疾患
■腰椎椎間板ヘルニア
やはり急性に発症することが多いのですが、腰痛よりも臀部から下肢への痛み、シビレを訴える、いわゆる「坐骨神経痛」を生じる代表的な疾患です。しかし発症直後は腰痛だけのことがあり、その後下肢症状を伴ってくることがあります。初期は「ぎっくり腰」と思っていても、後から下肢症状が出現したらこの疾患を疑います。画像的にはX線写真ではわからず、MRI検査で確定できます。
■骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折
骨粗鬆症は加齢と伴に骨が脆くなる疾患で、転倒などで手首や足の付け根の骨、そして背骨の骨折を惹き起こします。背骨の骨折は尻もちなどの外傷が原因のこともありますが、「ぎっくり腰」の時と同じく重いものを持ったり、姿勢を変えたりしたとき、あるいは何もしないでも生じることがあります。診断はX線写真で可能です。
■転移性腫瘍による脊椎病的骨折
内臓などの癌が骨に転移し、弱くなった部分の骨が折れるのが病的骨折ですが、脊椎は転移しやすい所で、これを生じるとぎっくり腰のような症状を惹き起こすことがあります。単純X線写真では分からないことがあり、MRI検査が有用です。
[ 更新:2007-04-13 09:11:28 ]